注意すべき様々な周波数特性


 双極差動導出の際に考慮すべき幾つかの周波数特性を説明する.皮膚からの深さ方向のフィルタ特性はローパスフィルタであり,深い位置にある筋線維ほど低域周波数成分が強調される.この皮膚効果フィルタ以外は設計が可能である.特に,双極差動導出によるフィルタは電極間隔によって変化することに注意が必要である.さらに,双極差動導出は空間フィルタを設計している点に注目しよう.例えば,皮膚表面から深い位置にある筋線維の活動は皮膚による低周波フィルタの影響を受けているため,電極間隔を比較的長くして低周波数成分が計測できるようにしておく必要がある.一方,別々のMU活動電位(MUAP: MU Action Potential)を分離するには,MUAPどうしが重なり合わないように高周波成分を強調する必要がある.そのためには電極間隔は狭い方がよい.ただし,狭い電極間隔は比較的浅い部分の筋線維の活動しかとらえていない.このように,双極差動導出とは空間フィルタの設計に他ならない.

(a)深さ方向の皮膚効果フィルタ

(b)双極差動導出による空間フィルタ

(c)増幅器の周波数特性