表面筋電図から神経筋活動を探る


 複数の活動電位毎の特徴からより詳細な神経筋活動の発火テーブルを作成しようとすると,個々の活動電位毎に干渉波形を分解する方法(Decomposition法)が必要になる.1980年前後に幾つかの提案がなされたが,De Luca らは,針筋電図で観測した複合筋活動電位o(t)が複数のMUAP波形からなると仮定た方法を提案した.生理学的には,筋肉の収縮につれて,幾つかの種類の筋線維が順番に活動することが知られており,新たに参加する運動単位活動電位(MUAP)波形(インパルス応答に相当)を何らかの方法で計測することによって,複合筋活動電位をその成分波形へと分解する事ができる.De Luca らのPrecision Decomposition法では,1本の針に4本のワイヤ電極を通して異なる3方向からo(t)を計測し,その観測位置による波形の違いをみながら,弱い収縮時に出現するMUAP波形から順に複数のMUAP波形へリストアップする.この際,類似するMUAP波形の発火時刻を調べていく.2つ以上のMUAP波形が重畳した部分では,それまでにリストアップしたMUAP波形を順に差し引いて,誤差が白色雑音になるようにする.また,これまでリストアップしたMUAP波形とは全く異なるMUAP波形が出現した場合,これを新たにリストに加える.以上のようにして,テンプレートマッチングと点過程としての特徴から複合筋活動電位を分解する.さらに,MUAP波形と神経インパルス発火時刻との関係から神経インパルスの firing tableが求まる.これによって,様々な条件下でのMUの振る舞いを調べることができる.